櫻井  宏明@川島ひばりが丘養護学校です

9月例会で報告した全国障害者問題研究会全国大会での「パソコン・情報アクセス」分科会の報告です。

いままでの全障研「パソコン・情報アクセス」分科会のレポートやまとめは以下のWebページから
    佐々木夏実  
        http://www.tena-jp.com/dis/zen_ken/zensyouken.html
    全障研      
        http://www.nginet.or.jp

全国障害者問題研究会(全障研)は障害者本人や家族、障害者福祉・医療・教育などの関係者が
会員の研究組織です。月刊誌「みんなのねがい」研究誌(季刊)「障害者問題研究」などを発行
するほか、全国大会をはじめ各種問題別研究集会(乳幼児研究集会、青年期教育研究集会など)を
行っています。また、各都道府県には支部があり、支部ごとに機関誌の発行、研究会の開催などの
活動を行っています。

今年のは長野で全国大会が開催され2100人が参加しました。
分科会の参加者は15名(障害者本人、施設職員、教員、技術者、ボランティアなど)でした。
    分科会は1日半あり、基調報告、記念講演、レポートに基づく討議で進めました。
    報告集が12月に発行されますが、そちらには田中さんのまとめが載ると思います。
今回のまとめは櫻井の個人的見解を含んだものです。

【記念講演】
伊藤英一氏(長野大学)「情報バリアフリーの支援」

【レポート】
「障害者のIT利活用支援のかたち」  神奈川  梅垣正宏
「埼玉県内のパソコンボランティアの状況」  埼玉  田中克典
「JIS規格になったWebアクセシビリティ」  神奈川  濱田英雄
「神奈川における障害者に対するIT支援のネットワークづくりについて」
    神奈川  佐々木夏実
「学校教育における情報機器・ネットワークの整備と障害児学校での利用」
    埼玉  櫻井宏明

【討論のまとめ】
(1)基本的人権としての情報アクセス権
      今年の分科会では、情報化社会の進展にともなって「趣味の道具」であった情報機
    器が情報アクセスやコミュにケーションに欠かせない道具になってきました。日本で
    は電子国家、電子地方自治体が推進されるなど国家戦略として情報化が推進されてい
    ます。それにともなって障害者が「情報弱者」となる危険性も増大しています。まさ
    に情報を受信する権利(障害にあわせて受け取りやすい形に加工することや情報のユ
    ニバーサルデザインも含む)や情報を発信する権利は新しい「基本的人権」といえる
    ようになってきています。このことをあらためて確認しました。

      基本的人権の保障という観点からすると情報機器を使って情報に近づく(受信・発
    信する)権利は全ての人に等しく保障されなければなりません。そうした人権保障の
    観点から物的、人的サービスはどのように保障されているのか、問題点はどこにある
    のかをレポート報告や討論をとおして論議しました。

(2)物的サービスと人的サービスの提供がどうなっているのか
      リハビリテーション・エンジニアとして豊富な臨床的経験を持つ伊藤英一さん(長
    野大学)の講義では、コミュニケーション支援の内容は一方的にサービスが提供され
    ることはあり得ず、障害当事者と支援者との関係(コミュニケーション)の中で試行
    錯誤しながら創り上げられていくことが示されました。

      梅垣正宏さんのレポートでは、パソコンボランティア団体の成立過程をレビューし、
    その意義と問題点が報告されました。とくに基本的人権としての情報アクセス権の保
    障のためにはパソコンボランティアでは個人情報の扱いやプライバシー保護、障害の
    理解や二次障害への配慮などの点で限界があり、社会的制度・システムが求められて
    いることが指摘されました。

      討論では所得が少ない障害者が情報機器やネットワーク回線など物的サービスをど
    のように手に入れるのかなど具体例も出し合いながら情報交換が行われました。障害
    当事者からはディサービスでも人的・物的な面から利用者が希望してもサービスが提
    供されないという体験も報告されました。

      相対的に人的なサービスが遅れているといえます。国が予算措置をした2年間のIT
    講習会事業の中では各地で障害者向けの講習会も行われましたが、予算措置が終了し
    た後も継続している例は少ないようです。梅垣さんからは「IT支援専門員」(仮称)
    の制度化を提案しました。

      教育現場でのIT利活用の状況について櫻井宏明が報告しました。国の情報化戦略の
    流れの中で情報機器とネットワーク化は推進されているが、機器やネットワークのメ
    ンテナンスなどが現場の教師任せで、本来教師の仕事である子どものためにどのよう
    に利活用するのか教育的に検討する視点が弱くなっていて、それを改善するために外
    部の力を借りる仕組みが必要です。

(3)IT支援ネットワークとコーディネーター
      障害者などのIT利活用を進めるためには行政機関、医療関係の諸機関、福祉関係諸
    機関、ボランティア団体やNPOなどとの連携した支援が重要になっています。

      総務省の研究事業として神奈川県では実証実験をはじめていることが佐々木夏実さ
    んから報告されました。報告では、ネットワークの中核となる団体の設立が重要であ
    ること、コーディネートできる支援者の役割が重要であることなどが報告されました。
    パソボラがない地域でも支援体制を整備するためにモデルを示していきたいとのこと
    でした。

      行政側でもどのようにしたらいいのかわからないという側面もあります。具体的な
    「提案」を行政にしていくことが大切であると佐々木さんは主張しました。

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 櫻井  宏明
 http://www.bekkoame.ne.jp/~shiroaki/
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